国が戦争を始めた時、「国民に責任があるのか」、日本と米国について考えます。
今回は、軍備にまつわる話をします。
軍備は必要か
必要ですが、条件があります。
基本は、「隣国が侵攻されると疑心暗鬼にならない程度に自国の軍備を抑える」のが賢明です。
この為に、通常、地域全体で軍縮協定や軍事同盟(NATO等)を結び、軍拡競争に陥らないようにします。
しかし、安心は出来ません。
対立する軍事同盟が互いに牽制するようになるからです。
もう一つ日本には厳しい状況があります。
それは三つの独裁国家に囲まれていることです。
一方、米国などの軍事同盟があり、安心できる部分もあります。
考慮すべき問題とは何か?
仮想敵国の想定と抑止力です。
通常、自国の軍事力は、仮想敵国を設定し、相手の侵攻意欲を挫く程度まで上げることを目指します。
この軍事力に期待するものを抑止力と言います。
多くは自国より巨大な軍事力を持つ国を仮想敵国に選びますので、軍拡競争に突入しやすい。
話は単純そうですが非常に厄介で、この仮想敵国と抑止力の概念は、頻繁に間違いを生み、むしろ戦争を呼び込むことになった。
簡単に幾つかの事例を紹介します。
抑止力への過信と、過度な期待が戦争を煽った例
第一次世界大戦では、軍事同盟が引き金になりました。
当時のヨーロッパは、三国同盟(独・墺・伊)と三国協商(英・仏・露)という巨大な同盟網によって勢力均衡を保っていました。
「自国を攻撃すれば同盟国が参戦し、世界大戦になるぞ」という威嚇が、互いの戦争を抑止すると信じられていた。
しかし、2発の銃弾によるオーストリア皇太子夫妻の暗殺が、引き金になり、相次いで同盟国が戦端を開き、戦争はユーラシア大陸を巻き込んだ。
太平洋戦争(日米開戦)では、日米共に判断ミスをしていた。
既に説明しましたが、日本陸軍は日独伊三国同盟に「強大なドイツと結べば、アメリカは二正面作戦を恐れて妥協するだろう」という強力な外交的抑止力を期待した。
しかし米国は「世界支配を企む枢軸国側の包囲網」と捉え、日本への敵対心を激化させ、開戦に向かわせた。
また米国は、日本の中国・東南アジアへの拡張政策を抑止するために段階的な経済制裁を実施し、太平洋艦隊を真珠湾に配置した。
しかし日本は「国家の生存に対する決定的な脅威」であり、ジリ貧になる前に「予防的な先制攻撃」へと向かった。
米ソの核軍拡競争は、抑止力の概念を変えながら核戦争の防止を図った。
これは抑止力が如何にあやふやなものであり、難しいかを示している。
1940年代から1980年代までに、大きく3~4段階の変遷を経た。
大量報復戦略⇒相互確実破壊⇒軍備管理と相殺戦略へと、両国は交渉を経て兵器削減条約を結んできた。
互いに相手を核で完全に破壊する前提で始まったが、やがてピンポイント、核には核で、通常兵器には通常兵器でと、限定する方向へ進んだ。
仮想敵国を誤って開戦した例
ベトナム戦争が最も象徴的で悲惨な例と言えます。
1955~1975年、米国が南ベトナムを支援する為にベトナムに侵攻し、北ベトナムとベトナム解放戦線との間で行われた戦争です。
米国の5人の大統領が、共産主義の拡大を恐れ、南ベトナム支援を開始し、徐々に大規模派兵を行うようになり、遂には北ベトナムが勝利し、米国は撤退した。
総死者数は200~400万人、米国も6万人の死者を出したが、ほとんどはベトナム人でした。
当時の米国は、北ベトナムを「ソ連や中国が操る共産主義の手先」という巨大な妄想に憑りつかれていた。
しかし北ベトナムの動機は、「外国勢力に分断され、米国の傀儡政権となった南ベトナムからの民族独立と国家統一」でした。
この戦争を指揮した米国のマクナマラ元国防長官は敗戦の20年後、「一枚岩の共産主義の脅威」など存在せず、ベトナム人のナショナリズムの強さ、そしてベトナムは中国と対立さえしていた事を後になった知ったと回顧録で深く反省しています。
彼は間違ったが、己の重大ミスを正直に告白できた立派な人物でした。
日々、嘘を吐き続ける大統領と同じホワイトハウスにいたとは考えられない。
イラク戦争も、有りもしない敵(兵器)を求めた結果でした。
満州事変が太平洋戦争へと向かわせた。
これは少数グループによる仮想敵国の想定が、大きな災いを招いた日本らしい事例です。
満州事変の首謀者は関東軍参謀の石原でしたが、彼は「いずれ日本は米国と戦うことになる」、この理由は、日蓮の予言にある「世界最終戦論」に基づいていました。
馬鹿みたいと思われるかもしれませんが、世界中の多くの宗教に「最終戦」が盛り込まれており、新約聖書にハルマゲドン、ヒンドゥー教にも善と悪による最終決戦が示されています。
日本の仮想敵国は日清戦争辺りからロシア(ソ連)でしたが、後に、米国も仮想敵国に格上げされた。
こうして満州事変が起きたが、政府は拡大阻止の手を打ったなかったので、泥沼にはまる事になった。
後に大本営政府は国策決定で、ソ連侵攻に備えた「北進論」と米国決戦に備えた「南進論」で対立することになる。
結局は、明確な理由もなく南進論を採ることになった。
まとめ
最初、皆さんは抑止力と仮想敵国の想定は、簡単だと思われたでしょう。
しかし、実際には、非常に複雑であり、困難なのです。
単純に、同盟を組むとか、軍備増強で済む問題ではないのです。
だからこそ、長い戦争の経験から、中立を選んだ国もあるのです。
一番重要なのは、世界中の情報を広く集め、分析を積み重ねる事と、仮想敵国と言えども、多くの国と外交交渉を続ける事です。
--目次---
1話;悪化の責任は誰に
2話;皇軍が選んだ道
3話;独裁に魅了された人々
4話;皇軍の軍人魂とは
5話;日本の戦争を振り返る
6話;軍備と敵について
7話;戦争に向き合う
8話;米国民へのお願い
次回に続きます。



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