20260930

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-2 後半

 

「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」


この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。


まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!


--- 目次  ---

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

 目くらまし戦術1

 目くらまし戦術2

    宗教と道徳について

    米国の宗教と共和党の合体

    



第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化



 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。


 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。



 

目くらまし戦術1

 大半の米国民には、悪化からの脱出法が見えていない。これには大きく二つの理由があります。一つは、反リベラルのイデオロギーであり、二つには、新自由主義への信奉があります。


 反リベラルの発端は、労働者らが20世紀前半に成功させて来た待遇改善と、それに付随した人権尊重の運動に対して、保守派が不快感を持つようになったことにあります。この運動な成功事例は、ルーズベルト大統領のニューディール政策でした。この流れは英国で始まりました。しかしやがて、労働組合が団結力を笠に着て、労働者貴族の横柄さが強調されるようになります。さらに時を経て、移民や黒人らが、必要以上に優遇(アファーマティブ・アクション)され、国民の血税やチャンスが、彼らに盗まれていると言う噂が強調されるようになります。そして米国連邦最高裁において、2023年、このアファーマティブ・アクションが違憲と判断されました。この政策は、多数の民族が共存する国々で実績を上げて来ているのですが。当然、この政策を世界に先駆けて、取り入れたのは米国のケネディ大統領で、公民権運動援護の一環として行ったのです。これが半世紀を経て潰えたのです。ここに米国らしい、手に負えない過激な動きがある。




 その一つが連邦最高裁の判事の保守とリベラルの比率です。2023年の連邦最高裁の判事は保守6人、リベラル3人でした。これにより違憲とされたのです。つまり、国民や議会が最良と思える政策を実施しようとしても、最高裁が保守(共和党)に握らている限り、実行出来ないのです。民主党政権では融和策をとり、最高裁の判事比率はほぼ半々で推移していました。しかしトランプが、一気に転換させた。これもトランプが保守派から歓迎される理由の一つです。過去にも保守優位の最高裁において、労働組合弱体に繋がる判決が出ています。「本人が望まない場合に組合の活動費を徴収することを認めない」判断をしました。これは、1世紀以上前の労働運動で勝ち取って権利だった。このような判決、裁定、法が積み重なり組合は弱体化して行った。加えて、2010年以降、幾つかの判決により、選挙への寄付総額の上限廃止と、選挙広告への上限廃止により、無制限の金権選挙が完成した。これは、政治が資金力に支配される事を意味し、国民には悪夢なはずです。


 この流れの中で、気づいて欲しいことは、米国の保守勢力があらゆる力(最高裁、マスコミ、政治献金、ロビー活動等)を使い、弱者救済、人権擁護と並んで労働組合への敵視を長年、国民に植え付けて来たのです。これにより企業家等は労働者の賃金低下と首切り、配転等で有利になり、益々、利益を上げることができます。これが反リベラル・キャンペンの大きな目的です。したがって、保守はしきりに、ルーズベルト大統領のニューディール政策の成果否定に躍起です。そして着実に、資金力の多さ、そして大企業こそが政治を牛耳るようになって来たのです。



 目くらまし戦術2

 

もう一つ、リベラル敵視に使える強力な手段があるのです。それは人間の感情に揺さぶりをかけることで、同性愛と堕胎の問題でした。米国以外の先進国であれば、同性愛は当人の自由恋愛を尊重し、堕胎は健康と育児に関わるので女性の判断を尊重し、彼らの人権と自由を守ることになると考える。しかし米国では、同性愛禁止は聖書に書かれ、堕胎は命を大切する聖書の教えに反するからと、キリスト教原理主義者(福音派)らは考える。そして、この教派を大々的に選挙に取り込んだのが、レーガン大統領からで、その後、この関係はより深く結ぶ付くようになった。なぜなら、この教派は米国人口の1/4に達しているのですが、その信心深さゆえに、票に及ぼす力は人口比を上回るのです。確かに、聖書には、それらしい解釈を可能にする文言はあります。ただし、同性愛禁止や堕胎禁止を匂わす旧約の章は、古くは3000年前の記述まで遡れます。このような因習を今に守ることが正常な感覚とは思えない。信仰の自由は尊重されるべきだが、政府が特定の教派の人権保護に抵触する可能性のある要望を政策実現することで、票を手に入れる事は憲法の趣旨に反するように思うのだが。


 さらに奇異なことがある。人権先進国の北欧諸国は、元を辿れば同じプロテスタントです。つまり聖書の文言を重視する教派の国と言えます。それなのに、この国々では同性愛や堕胎は本人の自己決定権を保証されています。米国の福音派だけが特別なのです。また非常に奇妙に思えるのは、福音派がハルマゲドン(最終戦争)を信じて、世界が戦争で破壊された後、パレスチナの地にキリストの再臨が起きると信じていることです。そして聖書が大きな隣人愛を説いているにも関わらず、イスラエルの虐殺を支援して止まないのです。米国はイスラエル以外で最もユダヤ人が多く、成功者も多い国です。だから潤沢な資金が、宗教や政治を動かしている。当然、信者らは地球は球体でなく、人類は猿から進化していないと考えます。こんなセクト的教派に振り回されては困ると思うのですが。共和党は、悪辣でも強力な宗教集団であれば利用するのに躊躇がないのです。




 共和党には、民主党との敵対を最初に訴えて人気を博したギングリッジ議員がいますが、この人物が米国で最初に悪辣なセクト教団の統一教会を共和党の味方に引き入れた。同様に福音派と共和党はがっちり手を組み、互いに手に入れたいものを得た。福音派は、同性愛禁止、堕胎禁止、進化論授業禁止、イスラエル軍事支援を手に入れ、共和党は、代わりに民主党拒否(反リベラル)を通じて、最終目標の労働者権利剝奪、減税と企業・富裕層優遇を手に入れたのです。私に言わせれば、共和党の得たものは福音派の得たものより遥かに貨幣価値が大きく、福音派の人々は心(道徳感情)を満たせたに過ぎない。米国南部に暮らす多くの福音派は、現地の地下資源開発企業の大きな公害被害にめげず、企業の発展による地域振興に夢を託し、減税による低福祉や定収入に我慢し、崩れ行く共同体をキリスト教会への固い信仰で守ろうとしている、実にけなげな人々です。選挙の為に、彼らを食い物にしている人々に腹が立つ。トランプの言動に、その様子が端的に現れている。彼は信仰心もなければ道徳心も無いが、福音派の票を手に入れる為に、戦争を行い、人権など無視している。




 宗教と道徳について

 


 信仰の自由は守らてしかるべきです。しかしその信仰を理由に、一方的に他者の自由や権利を剥奪する事は許されない。これは現代の魔女狩りです。しかし米国の共和党には、宗教による弊害への意識が稀薄です。

 人の道徳感情には、思いやり、公正、忠誠、権威、神聖、自由等があり、保守派とリベラル派で重視する道徳感情に差異があります。これが両派の敵対感情を生むとする考えもある。道徳感情は進化で生まれた感情ではあるが、個人の道徳感情の強さは、属する集団や文化に大きく影響される。だからこそ、これら道徳感情が現代社会に適合するかを理性的に判断し、コントロールするべきです。例えば、遺伝に支配された感情や欲情のままに生きるべきと信じるのは馬鹿げている。問題は、既に述べたように、教団や政治団体がこれらを悪用してしまうことです。付け加えるならば、多くの共同体は無意識に、この道徳感情によって団結を強化し、宗教にその力が大きい。道徳感情が保守やリベラル、宗教を選ぶと考えるより、集団や宗教が道徳感情を強化していると考えるべきです。永続している共同体の中では、これらが強化されている。この典型例は、ヒンドゥー教徒のバリ島バンジャール(共同体)に見られ、米国の福音派にも言えるだろう。これをもって宗教を非難するのではないが、行き過ぎは、その共同体を閉塞状態(因習に囚われる)にする可能性がある。今の、米国の異常な精神状態を冷静に振り返って欲しい。


 実は、20世紀以降、宗教が懐古・原理主義的になり、世界各地で混乱と反動が生まれている。イランで、1979年、イスラーム革命が起きた。これは預言者ムハンマドの時代や初期イスラームの教えへの回帰を掲げ、当時の過度な西洋化を「イスラームの精神を汚すもの」として激しく批判しました。サウジラビアは1932年に建国されたが、この王家は、初期イスラームの純粋な形に戻ろうとする「ワッハーブ主義」を取り込むことでアラビア半島の統一への力を得た。インドのモディ政権は、「純粋なヒンドゥー教徒の土地としてのインド(ラーマ神の治世)」の復興を理想とするヒンドゥー右派の宗教情熱を取り込むことに成功している。イスラエルのネタニヤフ政権の連立に不可欠なユダヤ教右派は、神がユダヤ人に与えたとされる「約束の地(ヨルダン川西岸地区などを含む)」の領有と、ユダヤ教の律法(ハラーハー)に基づいた国家運営を求めます。ロシアもロシア正教に回帰している。


 これらには共通していることがある。現代の急速なグローバル化や世俗化に対する「強い危機感」が生まれ、「かつての正しかった時代」という神話的な過去を再構築しようとする教団が力を持ち始めた。それを保守的な政治集団が、選挙や革命に利用し権力を掌握するのに使ったと言える。この危険性と恐ろしさは、外部から見れば明瞭なのですが、埋没していると分からない。



 米国の宗教と共和党の合体

 

 欧州と比較すると同じキリスト教圏でも、米国は異なる。銃犯罪の多さ、暴力(銃)への寛容さ、そして福音派等のセクト化(巨大組織だが排他的)と政治への関与です。米国は、英国と同じ白人(アングロサクソン)だが、北米大陸で育まれた文化がある。米国は、かつてピューリタン(プロテスタントの一派)が北米大陸に植民したことで始まった。彼らは英国教会から脱することにより自らの信仰に忠実であろうして、未開の地に移住し、森林を切り開き、町を造って来た。そして勤勉・勤労であり、聖書に忠実であろうとした。これが今の米国の精神を育み、発展を支えているとかつて賞賛されたことがある。しかし私には、深刻な軋轢(歪)が生じているように思える。


 初期に米国の教会はヨーロッパに比べ大きな違いがありました。一つは、様々な宗教やキリスト教派が各地域に教会を造り、統合される事もなく、まして国からの支配もなければ財政支援もありませんでした。つまり独立独歩から始まった。これが憲法で政教分離がうたわれた理由です。もう一つは、大平原と森林を一から開拓し、開墾地は彼らの所有地になったのです。また広大な原野に村や町が点在していきました。これが西部開拓です。これらを背景にして、米国では300年間に三波の信仰復興が起きました。この復興とは、突然、信仰に燃えた人が聴衆に神への信仰に目覚めるように回心を求める演説を始め、それが各地に広がり、大きなうねりとなり、回心者が増えた。このブームは長続きはしないのですが、キリスト教徒の意識を高め、幾つかの社会運動と結びついて行きました。この演説者は、多くの場合、正規の牧師や宣教師ではなく、既存の教会から自由な人々でした。これが受け入れられた背景に、町や村は比較的新しく、強固な文化やネットワークが存在しておらず、他から流れて来た演説者は、村人の孤独感を癒した事も大きかったのでしょう。



 こうして米国の初期の白人、キリスト教徒には、大きな変化が現れました。初期には、政治支配者や教会の権威、つまりエスタブリッシュメントに反発し、必要あらば既存の教会からも独立し、地域毎に自由を選びました。これが幾たびかの信仰復興を経て、人々の平等や自由への意識が強くなって行きました。米国憲法は政教分離をうたっているが、宗教団体の政治活動は基本的に認められています。19世紀、福音派は、貧困層への救済活動に熱心でしたが、20世紀後半から、政治や社会問題に積極的に関与し、イスラエル支援を強硬に唱えるようにもなっている。


 1980年以降、米国の信仰復興(リバイバル)のエネルギーは、「宗教右派」と呼ばれる強力な政治運動へと姿を変え、社会を二分するほど過激化していきました。本来の「個人の心の救済」や「貧民救済」から、「国家の権力を握り、キリスト教の価値観で法を変える」という政治的な戦いへシフトしていったのが、最大の特徴です。それまで政治と距離を置いていた福音派が、保守派の政治家と手を結び、巨大な集票組織を作りました。これをモラル・マジョリティ(道徳的大多数)と呼び、人工中絶の反対や、公立学校での祈りの時間の復活を掲げました。福音派の圧倒的な支持により、レーガンが当選し、宗教勢力が大統領をも動かす政治の主役に躍り出ました。1990年代〜2000年代には、彼らは文化戦争を激化させ、メディアの発達(宗教専門のテレビ・ラジオ)を利用し、テレビ伝道師が活躍し、草の根による支配を強めました。また設立されたキリスト教徒同盟は共和党の地方組織を実質的に乗っ取るほどの力を持ちました。2000年代、その代表者はブッシュ大統領を支え、イラク戦争の支持や、同性婚反対の運動を過激化させました。2010年代から現在、トランプ支持と「キリスト教ナショナリズム」が台頭していきます。ここ数年で、過激化はピークに達しています。


 信仰の熱狂が、過激な政治思想と完全に融合しました。2016年以降、 伝統的なキリスト教徒のイメージとはほど遠いドナルド・トランプ氏を、白人福音派の約8割が支持し、トランプ現象が起きました。またキリスト教ナショナリズム、「アメリカは神によって白人キリスト教徒のために作られた国であり、その特権を取り戻すべきだ」という過激な思想が広がりました。2021年の連邦議会議事堂襲撃事件でも、十字架や聖書を掲げる人々が多く見られました。2022年、保守派の長年の悲願だった「人工妊娠中絶を認める判決(ロー対ウェイド判決)」の覆しに成功。これにより、宗教的なルールがアメリカ全土の法律に直接影響を与える時代へ突入しました。1980年以降は、自分たちの聖書的価値観を法律で強制しようとする「他者を排除し、国家をコントロールするエネルギー」へと過激化していったと言えます。



 私は米国の信仰復興に見られる熱狂は危険な段階に入ったと感じています。その実例が、「赤狩り(マッカーシー旋風)」です。アメリカのキリスト教、とりわけ福音派が現代のような強大な社会的地位と政治力(のちの宗教右派)を獲得する決定的な転換点となりました。この時期、冷戦の恐怖を背景に新しい信仰復興運動が巻き起こり、福音派は「反共産主義の急先鋒」として国家の主役に躍り出ました。これを利用し人気を博したのが共和党のマッカーシー議員でした。当時、米国内での被害としては、共産主義の疑いをかけられ、多くの映画関係者から民主党系の国務省スタッフ、学者等が職を失い、投獄もされた。しかし、一大ブーム(1947年~)を起こした熱狂も4年ほどで下火になった(虚言が露見)。しかし、当時、占領下にあった日韓では、共産主義にまつわる公職追放、解雇、思想弾圧、果てには投獄・虐殺が起きた(1949年、国鉄総裁下山事件など)。これは日本の労働運動に多大な禍根を残しました。米国、特に福音派は、共産主義を悪魔の思想と定義し、その後も憎悪は続いています。共産主義への過激な否定感情を通じて、むしろ米国内、特に共和党は国民の一体感を醸成することを学びました。赤狩りの時代、「共産主義の脅威から救われるには、今すぐ悔い改めてイエスを信じよ」と唱える福音派の最大の伝道師を共和党アイゼンハワー大統領は顧問に迎えています。結局、恐怖や敵、多くは悪魔に対して国内が団結する術を手に入れ、その過程で、甚大な被害が出ているのです。それは米国の大戦後の出兵や戦争、ベトナム戦争やイラク戦争は、それらが夢想が煽った結果でした。この辺りは、ヒトラーのユダヤ人と共産主義者を罵倒したのと同じでした。


 1950年代、マッカーシー旋風とリバイバルの波によって、米国は神の国になっていたのです。 1954年、赤狩りの最中に、公立学校などで唱えられる「忠誠の誓い」の文章に 「神の下に」という文言が正式に追加されました。その2年後には、アメリカ紙幣にも印刷されている "In God We Trust"(我ら神を信ず) が国の公式モットーとして法制化されました。これらはすべて、「無神論のソ連(赤)」と「神を信じるアメリカ」を明確に区別するための、マッカーシー思想と福音派リバイバルが合流して生み出した産物です。


 一言でいうと、米国のキリスト教の主流は、何よりも感情(回心等)を重視するので、爆発的に盛り上がり、盲目的になってしまう。彼らは宗教哲学や論理に意を介さないので政治に利用されやすい。これはヨーロッパには無い特徴です。



 ----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。


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