20260928

短縮版 迫る多難な危機  第三章 3-8,3-9

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-8 分断と対立の深みに喘ぐ世界  

       まとめ

  3-9 世界は協力しなくなった  

       何が世界で起きているのか?

 

     

 

 

第3章 我々が直面している危機

 

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-8 分断と対立の深みに喘ぐ世界

 

 現在、先進国で概ね共通して宗教・移民・人種・LGBTQ を巡る対立が深まっている。かつて「多様性の尊重」や「寛容」を掲げた融和の精神が先進国に満ちた時代があった。しかし現在は異なる集団を差別し敵視する社会的分断から、さらに排除へと先鋭化しつつある。何が人々をこうも駆り立てたのだろうか。この半世紀の先進国の分断の経緯を簡単に追います。

 

1960〜1970年代、多文化主義と移民: 欧米諸国(カナダ、オーストラリア、欧州の一部)が移民労働者の定住化を受け入れ、多文化主義や寛容を公的な価値観として掲げ、異なる文化や宗教の共存を目指した。この時代、旧来からの差別は残存していたが20世紀初頭の労働運動・民主主義運動の息吹が息づいており、米国では公民権運動、女性解放運動、学生運動、同性愛者解放運動が次々に登場した。欧州でも福祉国家の拡充と社会解放が進んだ。一方で、移民の増加と、米国への移民が白人から有色人種(ラテン、アジア)へと変化し増えた。

 

1970〜1990年代、保守革命が始まる:それまでのリベラル化(市民権運動、女性解放、性の解放、宗教的寛容の拡大)と、白人以外の市民が増えることで保守派は価値観の喪失を恐れるようになり、政治的にリベラルに対決姿勢を取るようになる。特に米国では1970年代後半から、福音派などの保守的キリスト教勢力が多文化主義を否定する政治運動を強めました。米国では、宗教上の道徳観を国家のアイデンティティにするまでなった。共和党が保守的キリスト教勢力を取り込むことで保守革命は強大な力を得ることが出来た。また冷戦終結前後で、欧米は移民の受け入れを増加させた。

 

1980~2000年代、経済格差が深刻化: 1980年代に保守改革の一環として始まった新自由主義政策は、市場の自由と小さな政府を標榜し、リベラルの人権や権利を優先する福祉政策を否定していった。またグローバル化が進んだので産業の空洞化が進行した。空洞化に対応する労働者転職や産業転換をないがしろにした事と、金融経済の発展が、福祉政策低下と相まって、格差拡大を進行させた。リーマン・ショックなどの世界金融危機が頻発する度に格差は拡大し、経済・金融・福祉政策に問題であるにも関わらず、格差の不満は移民や政治エリート、グローバリズムに向けられるようになっていった。理由は簡単で「外国人が仕事を奪った」が最も納得し易いからです。こうして文化戦争や経済的な不満は、分かり易い敵を生み続け、リベラルに対立する右派ポピュリズムの台頭に向かうことになる。また9.11同時多発テロが起こり、イスラムへの警戒感が高まり、さらに宗教的・文化的な対立が先鋭化した。

 

2010年以降、欧州難民危機とポピュリズムの台頭: シリア内戦等に伴い大量の難民・移民が欧州に流入し、社会統合の限界や治安への懸念から排外主義的な政治勢力が急伸した。



 まとめ

 

 この分断と対立に繋がる社会変化をもたらした背景とは何か? 端的に言えば、20世紀初頭の労働者優位等にみられる民主主義の大躍進が、保守層に反感を抱かせた事から始まった。保守層(伝統重視の人々と富裕層)にとって、この大躍進が社会の後退に思えた。一つは、権利の平等を広げる事は、従来の男尊女卑や家父長制を温存する伝統を否定する事に繋がった。今一つは、富の再分配は富裕層の富の減少を確実にしたことだった。保守層は、伝統を破壊してはならない根拠として聖書(宗教的権威)を担ぎ出した。また、富の再分配は、労働意欲を減退させるので、より自由が不可欠だと復古思想を持ち出した。そして、国の保守的なエスタブリッシュメント達は、経済と社会政策の大転換のキャンペーンを行い、実行に移した。当然ながら格差拡大は広がった。こうなると、中間層以下の人々にとって所得が伸びないゼロサム社会では、他者に与える施し(再分配)を与える余裕はなくなったと考える人が増えた。こうした中、中間層以下の人々の窮地は、グローバル化と移民、リベラルな福祉政策(税の徴収)が原因だと煽られるようになった。こうして、他者を憎み、排斥することで解決出来ると考える人々が増えた。この精神状態、社会状況、懐古・復古主義に陥る宗教、それを利用する政治家は、歴史上繰り返され、ファシズムや独裁に繋がって国を滅ぼすことになることが多い。

 

 ところが、より社会を不安定にしポピュリズムに向かわせているものが二つ生まれた。一つはSNSです。アルゴリズムの基本設計において、エンゲージメント最大化(いいねを重視)が2010年代中頃から始まり、さらに怒りの感情を優先するようになったことで、利用者は知らず知らずの内に煽情され、フェイクニュースに飛びつくようになってしまった。もう一つは、ロシアのプーチンが、2014年のクリミア併合以降、欧米の右翼ポピュリズム政党を裏で支援を始めた事も大きい。彼は強力な諜報網を使い、金銭的支援からSNSによる米国大統領選挙への介入まで行っている。彼の意図は世界に自分に連なる独裁者を増やし、ロシアと自身の存続を確実にすることだろう。

 

 

 

 

3-9 世界は協力しなくなった

 

 大戦後、世界はグローバル化を背景に、協力体制を整えて来た時期もあったが、今やエゴむき出しになり、多数による協力は期待出来なくなった。幾つかの協力に失敗した例を見ます。

 

*イスラエル入植地に関する安保理決議案(1972年以来)

 イスラエルの入植地問題を巡る安保理の決議案は、米国の50回以上の拒否権行使や主要国間の対立で採択を逃すことがあり、国際社会の統一的立場が示せない場面が繰り返された。

*国連海洋法条約(UNCLOS / 1982年採択)

 「海の憲法」として採択されましたが、深海底の鉱物資源開発に関する規制を巡り、米国が自国産業への制約を嫌って現在に至るまで批准していません。

*生物多様性条約(CBD / 1992年採択)

 欧州主導で環境・生態系保護の枠組みが作られましたが、米国はバイオテクノロジー企業の知的財産権が侵害される懸念などから署名のみで未批准であり、国連加盟国で唯一の未締約国です。

*包括的核実験禁止条約(CTBT / 1996年採択)

 国連総会で採択されたものの、米国上院の反対で批准せず、中国も未批准です。さらに2023年にはロシアが批准を撤回し、核軍縮体制の亀裂が決定的になりました。

*国際刑事裁判所(ICC)ローマ規程(1998年採択)

 戦争犯罪などを裁く常設裁判所の設立に対し、欧州諸国は推進しましたが、米国は自国軍兵士が政治的な動機で訴追されることを恐れて署名を撤回。ロシアや中国も参加を拒否しています。

*クラスター弾に関する条約(オスロ条約 / 2008年採択)

 欧州のNGOや政府が主導して非人道的な兵器の禁止をまとめましたが、米国、ロシア、中国という主要軍事大国がこぞって参加を拒否し、現在も加盟していません。

*デジタル課税(デジタルサービス税)(2010年代後半〜)

 巨大IT企業(GAFAなど)から適切に税を徴収するため欧州各国が独自の課税を進めたのに対し、米国は「自国企業への狙い撃ちだ」と猛反発し報復関税をちらつかせました。OECDを通じた世界統一ルールの導入は現在も難航しています。

 

 

何が世界で起きているのか?

  

 世界は、この半世紀ほど徐々に一致協力出来なくなっています。途中、一度だけ冷戦終了後の1990年代、世界は最もまとまる事が出来たのです。

 

 1990年代には、国際環境法、国際経済法、国際刑事法、テロ対策、化学兵器禁止機関、旧ユーゴ・ルワンダ国際刑事裁判所、ICCローマ規程など、非常に多くの国際制度が発展しました。国連は1990年代を「国際法の発展における重要な時代」と評価しています。しかし、その後は、協力体制は崩れて行き、特に、2016年以降2025年と急激に悪化している。2006~2015年の10年間の安保理拒否権は19回でしたが、2016~2025年には49回と2.6倍に増えている。

 

 様々な原因が積み重なり、今に至っているが、大きな原因を挙げます。

*国内の巨大産業のロビー活動が議会を動かし、条約批准を拒否させる。米国。

*多くの国が独裁化を強め、特に大国が自国の地政学的利益を優先する。ロシア、米国、中国。

*最大の理由は、国内の不満が右翼ポピュリズムを招き、内向きになった。トランプ現象。

 

 これまで見て来たように、過去と比べものにならないほど、現在は世界の一致協力なしには解決出来ない重大な危機が、それも数多く迫っている。現状の、各国の内向きな態度を改め、また米国の横暴に耐えるだけではなく、多くの国が協力して米国と対峙し、さらに米国の立ち直りを促すまで行かないと、世界を救うことが出来ない。今は、その時なのです。

 

 

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

20260927

短縮版 迫る多難な危機  第三章 3-7

 


 「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-7 ITとAIがもたらす新たな産業革命  

  簡単な歴史                

IT革命が与えた影響

グローバル化とIT革命が労働に与えた影響、米国について

まとめ

    AI革命の社会・経済への影響              

     AIの本質的に恐ろしい部分

  まとめ

 

   

 

 

第3章 我々が直面している危機

 

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-7 ITとAIがもたらす新たな産業革命

 主に米国について分析します。


 

簡単な歴史

1940~60年代、コンピュータ革命

1970~80年代、パソコン革命

1990年代、インターネット革命 

2007年前後から、スマートフォン・クラウド革命

2012年~、AIのディープラーニング革命

2017年~、AIのトランスフォーマー革命

2022年~、生成AIの大衆化

2024年~、AIエージェント化

2026年以降の予測、自律型AIエージェントの普及、五感を持つ、フィジカルAI(人型ロボット)や自動運転等、急速な発展が間違いなく起きる。AIの知能は人類を越える可能性が迫っている。

 

 

IT革命が与えた影響

 

 経済の影響としては、事務処理・物流・金融のデジタル化によって生産性の大幅向上、電子商取引、SNS、クラウド、スマホアプリ産業等の新産業の誕生、インターネットにより国境を越えた取引が容易になりグローバル化の加速が挙げられます。社会への影響としては、情報格差の発生、SNSによる

コミュニケーションの変容よによる社会構造の変化、リモートワーク、フリーランスの増加による働き方の変化等です。ITは、あれよあれよという間に企業と国民がほぼ抵抗なく受け入れ、産業や経済に貢献し、国民にとって無くてはならないものになった。

 しかし、知らず知らずの内に社会を蝕む恐れも生じている。初期には、インターネットやSNSは社会の民主化に貢献するものと歓迎されていた。しかし巨大プラットフォームらが広告収入増大を目指してアルゴリズムを操作したことで、利用者は益々使用時間を伸ばし、遂には悪感情(怒り、不安、嫌悪等)を煽られ、フェイクニュースに囚われるようになった。研究者の中には、プラットフォームらが大統領選等で、一方に加担し、世論を誘導している可能性まで指摘している。規制しないければフェイク発信側に有利になる。またデジタル技術にうまく適応できない人は、経済的な苦境に晒される。益々、社会は高度な技術に覆われつつあり、個人にとっても社会にとっても扱いが難しくなってきた。

 

 

グローバル化とIT革命が労働に与えた影響、米国について

 普通、両者が進行することで、失業者が増え、賃金に影響を与える事が予想される。グローバル化は、米国内の製造企業の海外進出を促進し、この企業の従業員は職を失い、他の職に就こうとし、出来なければ失業します。またIT革命も事務作業の海外移転と合理化で国内に失業が増えることになる。一方で、両社の効果として生産性が上がり、新しい産業と職種が生まれることになる。

 


 左図は、この失業と転職、新規採用の結果を見ています。図のMfgは、全就業者数に占める製造業就業者数の割合を示します。緑線は全就業者数、オレンジ線は失業率を示す。図を見ると、グローバル化が大戦後進んだ事により、製造業就業者割合が継続的に低下する一方、全就業者数は順調に伸び、失業率はゆるやかに低下傾向にあることがわかる。失業率は、金融危機や景気循環の影響が大きい。これを見る限り、両者による失業は新規産業への転職等でカバー出来ていると言えそうです。

 


 上図は、IT革命が普及し始める1980年からの非農業部門就業者数内の変化を示す。茶色の製造業の低減と対照的に、他の三つの部門は拡大傾向にあり、緑の専門・ビジネスサービスと紫の教育・医療・社会福祉の伸びが大きい。つまり、失業を新規産業の就職で補えていることを裏付けている。

 

 

 しかし、別の問題が社会に強烈な不満を生んだ。


 上図は、所得層を10段階に分け、上位(富裕層)10%、中位(中間層)50%、下位10%の1980年から45年間の所得の伸びを示す。確かに三つの所得層に差は出ているが、それよりも恐ろしいのは、たった30%と64%しか増えていないことです。この間、米国の一人当たりGDPは約2.5倍増加している。つまり平均150%が当然のです。この差が出た理由は、労働者の稼ぎ(労働所得)以外の富が米国経済を上昇させているからです。分かり易い理由としては、GDP国内総生産に占める労働所得(労働分配率)が63%から53%に減り、企業の取り分が増え、さらに金融セクターの付加価値割合は5%から8%に増えた事が挙げられる。これで全部は説明できないが、米国は労働者にとって報われない社会になってしまった。この影響の方が遥かに大きい。それに加えて、グローバル化とIT革命で、高度な知的作業に適応出来るか出来ないかによる職業の二極化が激しくなったことが、さらに悲劇を生んだ。IT革命によって起きたと考えられる職業間の差を見ます。2025年、最も高給のIT・数学の雇用526万人、平均年収12万ドル、最低賃金の食品調理・給仕の雇用1368万人、平均年収3.7万ドルでした。また1980年と2025年の間で、製造業従事者は32%減で590万人減少、一方、低賃金サービス職は220%増で1,200万人増加した。結局、高給取りは増えたが、それにも増して低所得者が増えた。これが現在の、社会・経済構造の変化を如実に表している。

 

まとめ

 グローバル化とIT革命による経済への影響は、失業では無く産業構造の転換により賃金が大きく異なる産業・職種に分かれ、就業者数は低賃金の方が高賃金より多くなり、格差を広げることにある。これを転職支援や教育制度への改革で悪化を幾分和らげることは必要だが根本的な解決にはならない。既に見たように、米国の格差問題の本質は、別の要因の方が遥かに大きい。金融・巨大企業の利益率が上昇し、全般に株主への分配が増え、加えて以前からの新自由主義流の金儲け優先(金融業)、力のある富裕者の自由勝手、再配分縮小(逆累進課税と福祉予算低減)に尽きる。

 

 

 

AI革命の社会・経済への影響

 

 上述したようにIT革命で大きな変化が起きているが、AI革命はさらに人類に幸福を増すのか、それとも悲惨な状況を招くのかを考えます。現在はまだ序の口ですが、予想される経済の影響では、AIが文章作成・分析・プログラミングを代替し生産性の急上昇、ホワイトカラー業務の本格化的自動化拡大、AIエージェント・AI開発支援・AI監査などの新産業の創出が考えられる。社会への影響では、AIによる家庭教師・個別最適化学習で教育、AIによる診断支援・創薬開発による医療、AIによる企業・政府の意思決定等は、多大な成果が期待できる一方、AI依存、偽情報拡散、メンタルヘルス問題等が現実味を帯びて来ている。


  AI革命は、これまでの産業革命と本質的に異なる恐ろしさがある。英国で始まった産業革命は、動力で肉体労働を軽減したが人間の操作は必要で、一人で何倍もの生産が出来るようになった。続く電気・電力革命も同様だった。そしてIT革命は、コンピュータと回線によって情報処理作業を何倍も高能率化したが、これまた人間が必要だった。ただし高度に使える人には限定された。ところが、AI革命は、同じコンピュータと回線によって、労働者の頭脳作業を代替え出来るようになった。しかも遥かに高速で高度な知的作業まで、自律して出来るようになる。現在は、情報の調査と整理が得意だが、将来は開発、自ら問題を探し解決することも可能性になる。となると、ITの発達と組み合わされ、知的作業において人が不要になるので、多くの分野で失業が生まれるだろう。現時点で、その失業を埋めるほどの新規産業の創出があるかは不明です、必ず創出は起こるだろうが。失業に対して、新規産業の創出が遅れれば経済は恐慌並みになる可能性もある。

 さらにここ数年、急激にフィジカルAI(ロボット+AIエージェント+自律システム)が現実のもになっている。これが普及すると、頭脳労働だけで無く肉体労働も、装置や機械に代替えされてしまう。こうなれば、労働市場は壊滅状態になり、ロボット生産企業の勝者総どり状態になり、さらに一部の巨大企業が利益を上げ、経済と社会を支配する可能性が高まる。

 これに備えて、国は手を打つべきだが、トランプ政権では不可能だ。私としてはトランプが去り、ホワイトハウスが正常に機能することを祈るしかない。

 

 

AIの本質的に恐ろしい部分

 

自律的行動と暴走

  AIにある作業を命じたモデル実験において、その過程で「自らの電源を切られないようにする」「指示がなくてもリソースや権限を自主的に拡大・獲得する」といった挙動を、人間が命じていなくても、自動生成する事が判明しています。

 

ミスリードと検証の困難さ

 何千億〜数兆のパラメータ内部の推論計算を人間が即座に理解する手段はありません。内部回路を解読する研究が進んでいますが、AIの能力拡大スピードに解析技術の進化が追いついていません。またAIは人間が「もっともらしい」と感じる嘘や歪んだ論理を構築することに長けており、専門家であってもリアルタイムでその偽りを見抜くことは極めて困難です。

 

AI同士の相互検証は機能するか

 優れたAI同士が互いに監視すれば良いと思うのですが、現時点では、完ぺきではありません。「AI同士が同じ学習データのバイアスを共有して誤りを見落とす」「監視役のAIより実行役のAIの方が高度な場合、監視役を騙せてしまう」「結託して人間に都合の良い嘘をつく」といった懸念があり、万全な解決策にはなっていません

 

悪意ある主体(個人・企業・国家)による支配と破滅的リスク

 従来のサイバー攻撃は、攻撃者の物理的な限界がありましたが、AI一つでも高速で広範な被害を出し得ます。また、「人間の監視が追いつかない速度・規模で自動連鎖する」点が、従来のマルウェアなどとは質的に異なる危険性です。悪意ある人間が自律的な攻撃目的を持ったAIを野に放った場合、そのAIが自己複製やリソース獲得を行い、他のAIシステムを汚染・乗っ取ることで、人間の手では二度と制御できない規模の社会崩壊を引き起こすシナリオは否定できません。

 

 もうここまでお話すると、AIの恐ろしさは人類史上初めてか、悪魔のようにさえ見えて来ます。人類は暴走してしまったAIをコントロールすることがほとんど不可能かもしれない。結局、慎重な研究と国の管理が不可欠になりますが民間を拒否するわけではありません。

 

まとめ

 これまでの説明ではマイナス面を強調しました。ITとAI革命は否定されるものではなく、うまく世界がコントロールすれば、人類を飛躍的に進歩させるはずです。しかし、これまでの二度の産業革命の反省と、想像を越える未知の破壊力を考えると、社会と世界への受け入れには、今まで以上に真剣にならざるを得ない。恐れる事態は、すべて大多数の国民と労働者に訪れる。

 残念な事に、AIの管理・規制でも、保守派(福音派・MAGA派)とリベラルで対立があります。共に規制は望むのですが、前者は神への冒涜、保守派の検閲を阻止、後者は権利侵害、富の独占の阻止と、狙いが大きく異なる。ここでも分断が極まっている。

 

 

 

---全体の目次---

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

 

20260926

短縮版  迫る多難な危機  第三章 3-5,3-6

  


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-5 荒稼ぎし逃げ回るマネー

ここ10年間で荒稼ぎする横暴なマネー

  横暴なマネーは逃げ回る 

 3-6 地球温暖化を防止しなければ    

     温暖化を実感させる5つの事実

温暖化の原因が温室効果ガス排出である5つの証拠

温暖化が進んだ場合の10の重大被害

   人類が取るべき対策

まとめ

 

 

 

 

第3章 我々が直面している危機

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-5 荒稼ぎし逃げ回るマネー

 

ここ10年間で荒稼ぎする横暴なマネー

 

 2006年、米国のヘッジファンドAmaranthが、天然ガス先物取引の失敗により約60億ドル(約7,000億円)もの巨額の損失を出して破綻しました。同ファンドは、天然ガス価格が冬に値上がりすることを見越して大量に買い保有しました。同ファンドの運用資産の65%を注ぎ込みました。2005年は大型ハリケーン「カトリーナ」の影響で天然ガス価格が暴騰し巨額の利益を上げたが、2006年は予想に反して暖冬傾向となり、ガス在庫が積み上がったことで天然ガス価格が急落した。しかし損切が出来なかった。同ファンドの天然ガス先物市場のシェアは数割にのぼり、買い手が少なく無理して売れば、さらに暴落するのは確実でした。こうして同ファンドは最大級の規模で破綻した。

 

 2010年のフラッシュ・クラッシュ(株価の短時間の急落回復)では、超高速取引(HFT)を使った異常アルゴリズムの連鎖によりわずか36分間で約1兆ドル(約150兆円)の時価総額が消失した。当初は、光ファイバー回線や専用アルゴリズムを駆使し、一般投資家や年金基金が注文を出した「その1万分の1秒前」に注文を察知し、先回りして株を買い、数銭でも高く買い手に売りつける高頻度取引が行われた。現在はその速度は10億分の1秒に達しているが、透明性を持って行われ、全取引の約60%がこの手法で行われている。また予測シミレーションを行うためのAI導入が加速している。

 


 2021年、GameStop事件、歴史的な株価暴騰劇が起きた。発端はヘッジファンドが、業績不振の会社GameStopの株価が下落すると予測し、猛烈な空売りを仕掛けた。個人投資家たちは、この「過剰な空売り状態」に目をつけ、ネット掲示板で団結して一斉に株を買いました。株価が予想に反して急騰したため、同ファンドは損失を抑えるために「買い戻し(損切り)」を迫られ、この買い戻しがさらに株価を押し上げる連鎖が起き、株価は一時、数週間で数十倍にまで跳ね上がりました(ショートスクイーズ現象)。同ファンドらは数十億ドルの損失を出し、後に閉鎖になった。この事件は、投資家が企業価値とかけ離れて株価を操り、利益を得ている好例であり、また個人投資家がSNSにより集団で市場を動かした事例となった。

 

 2021年、ヘッジファンドArchegosが崩壊し、世界の主要金融機関に総額100億ドル(約1兆円以上)を超える巨額の損失を与えた。その仕組みは、金融機関(証券会社や投資銀行)が代わりに株を購入し、同ファンドはその株の値上がり益や配当を受け取る代わりに、金利を支払う契約「トータル・リターン・スワップ(TRS)」でした。同ファンドは複数の金融機関と個別にTRS契約し、同じ銘柄に、自己資金を何倍にも膨らませ投資した(過大レバレッジ)。こうして同ファンドの資産約15億ドル、エクスポージャー(株価総額)約100億ドルから、1か月以内に、約360億ドル、約1600億ドルに一機に膨張した。しかし突如、集中投資していた株が急落し、金融機関は追加の担保を同ファンドに求めたが、これが出来ずに破綻した。この問題は、同ファンドが個人資産を運用する会社であり、株の大量保有の情報開示義務を回避出来た事です。

 

2022年、暗号資産Terra/LUNA が崩壊し、数日間で約400億ドル(約6兆円)の時価総額が一瞬にして消失し、次いで暗号資産市場全体で4500億ドルが吹き飛んだ。この二つの暗号資産は互いに補完し信用を得るようになっていた。Terraはドルとの連動と年利20%をうたい、多額の資金が流入していたが、危険を察知した大口投資家が大量売却に出た。するとTerraを保障するLUNAの暗号資産プログラムは、買い支える為に、無限に自動発行し続け、結局大暴落した。これは、元々ドルとの交換も年利20%も不可能なシステムであって、詐欺行為でした。問題は、このような詐欺まがいの金融商品が、次から次と生まれては、儲ける人と損する人が群がることです。

 

 

 

横暴なマネーは逃げ回る

 


 これまで横暴なマネーを見てきたが、膨れ上がったマネーを富裕層や企業がタックス・ヘイブン(オフショア、租税回避地)に隠す状況を見ます。試算で異なるが、タックス・ヘイブンに隠された世界の富は約13兆ドル、世界GDPの約12.5%になり、税金逃れは毎年約5000億ドル(74兆円)に上ると見られている。

 

米国の巨大IT企業(アップル、グーグル等)がアイルランド、オランダ、バミューダ諸島など複数の国の子会社間に特許使用料を付け回し、海外利益の法人税率を実質1%未満にまで押し下げたスキーム。法改正で塞がれるまで10年以上使われました。アップル1社だけで海外に積み立てた未課税現金は2,500億ドル(約37.5兆円)。

 

 租税回避の巧妙な手口を要約すると、先ずタックス・ヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、会社→信託→財団→別会社→別銀行……という構造を作って、誰が本当の所有者なのか分からなくし、税逃れをしていた。これは違法ですが、見つけるのが困難なので、手が打てない。一つの回避地、パナマではペーパーカンパニーが21万社あり、世界200以上の国から、企業だけでなく政治家、有名人が名を連ねていた。

 

 これらには三つの問題があり、企業を呼び込むために税の免除や低減を行う国々や地域の存在、多国籍企業に課税する世界的なネットワークが未整備、この規制を阻害し続けている米国がある。

 

 

 

 

3-6 地球温暖化を防止しなければ

 人類が最悪の状況になるとしたら、独裁者が始めた核戦争か地球温暖化によると予想します。差し迫っている地球温暖化の脅威、その論拠とデマ、そして莫大な損害と急がれる解決方法について説明します。


温暖化を実感させる5つの事実

 

* 過去11年間が観測史上最も暑い11年

 2025年の世界平均気温は、1850~1900年平均より約1.43℃高い水準でした。さらに海洋の熱量も2025年に観測史上最高となっています。

* 2024年の地球平均気温は産業革命前より約1.5°C高い  

 世界気象機関によれば、2005~2025年の20年間、海洋は毎年、人類が年間に使うエネルギー量の約18倍に相当する熱を吸収しました。地球全体が巨大な熱の蓄積体になっている。

* 氷河・海氷・海面が実際に変化している

 世界平均海面は、衛星観測が始まった1993年以降で約11cm上昇しています。気候変動に関する政府間パネルIPCCは、2100年までの海面上昇を、低い方で約28~55cm、高い方で約63~101cmと予想しています。左写真はスバールバル諸島の氷河の写真で、氷河が数キロほど後退し、景観はまったく変わってしまった。

* 異常気象が世界各地で頻発している  

 猛暑、豪雨、干ばつ、山火事、海洋熱波、サンゴの白化が増加・深刻化している。温暖化が進むと、地球の気流や海流に変化が起こり、各地に乾燥・湿潤の極端な変化が生じる為に、異常気象が起こる。世界のサンゴ礁はこの70年間で50%以上喪失し、今後20年間で70~90%が消滅するとされている。当然、魚類も死滅します。

* 温暖化の被害は既に世界を脅かしている

 干ばつや水害、気候の変化により、コーヒーや小麦など身近な農作物の収穫量減少や品質低下がすでに始まっています。IPCCによれば、現在すでに33~36億人が気候変動に対して非常に脆弱な環境で暮らしています。このまま温暖化が進むと米国中西部のトウモロコシの生産量が最大40%低下する恐れがあると予測されています。

 


  温暖化の原因が温室効果ガス排出である5つの証拠

 温室効果ガス(CO₂・CH₄)が地球を覆う「毛布」となり熱を閉じ込めることは理論的・実験的に確認されている。  

* CO₂が急激に増えている

 産業革命以降、大気中のCO₂濃度は約280ppmから420ppm超へ急増。少なくとも過去80万年間で極めて高い水準です。この増加は化石燃料の燃焼によるもので、同様のペースで気温が上昇しています。

* CO₂は人類が排出した

 大気中のCO₂増加分の炭素同位体比を分析すると、化石燃料由来であることが明確に示されています。

* 気候モデルの一致

 自然要因(太陽活動、火山活動など)のみを考慮した気候モデルでは、1970年代以降の気温上昇を再現できません。人間活動による温室効果ガスを加えたモデルだけが、観測データと一致します。

* 放射力の衛星観測

 CO₂などの温室効果ガスが増えることで、地球から宇宙へ逃げる熱放射が減少していることが直接観測されています。

 

 IPCC第6次評価報告書(2021)では、1850〜1900年を基準とした2010〜2019年の温暖化(約1.1℃)のうち、人間活動による分は中心値で約1.07℃と推定されています。

 

 

* 自然現象(太陽活動・気候周期)は温暖化を起こしていない

 1800年代以降の急激な気温上昇は自然変動では説明できない。太陽放射エネルギーに変化はなく、むしろ成層圏は逆に冷え込んでいるので、現在の急激な上昇幅を説明できない。今は過去2000年で最速の気温上昇ペースで、自然要因(火山・太陽黒点)ではむしろ近年は寒冷化方向の影響が多い(複数の国連科学報告の総合評価)。気候モデルで「人為起源の温室効果ガス」を除くと現在の気温上昇は再現できない(IPCCの主要結論)。

 


  温暖化が進んだ場合の10の重大被害

* 海面上昇による沿岸都市の浸水(東京湾・上海・ニューヨークなど) → 年間数千億〜数兆ドル規模の資産損失

* 巨大台風・豪雨の増加によるインフラ破壊 → 年間数千億ドル

* 干ばつによる農業崩壊・食料価格の高騰 → 世界農業損失:年間数千億ドル

* 熱波による死亡増加(特に高齢者)→ 医療費・労働損失:数千億ドル

* 水不足による紛争・移民の増加 → 社会的コスト:数千億〜兆ドル

* 森林火災の増加(カリフォルニア・豪州など)→ 年間数千億ドル

* 生態系崩壊(サンゴ礁消失・生物多様性喪失)→ 観光・漁業損失:数千億ドル

* 感染症の拡大(蚊媒介疾患など)→ 医療・経済損失:数千億ドル

* 海洋酸性化による漁業崩壊 → 年間数千億ドル

* 世界金融市場の不安定化(資産価値の急落) → 数兆ドル規模の損失 

 

 被害額は温暖化の上昇温度によって異なります。ある2024年の研究では、3℃の温暖化で世界GDPが約10%低下すると推計しています。世界のGDPが110兆ドルとすると毎年11兆ドル規模(1700兆円)になります。現在の状況が続いた場合、2050年に世界GDPが最大14%、減少すると推計している組織もあります。

 

 

人類が取るべき対策

排出削減 化石燃料の段階的廃止(石炭→石油→ガス)、再生可能エネルギーの大規模導入(太陽光・風力・水力)、2010年以降、太陽光コスト90%低下、風力70%低下、建物・産業の省エネ化(断熱・高効率機器)、電気自動車・公共交通の拡大、メタン排出削減(農業・廃棄物・化石燃料)。

 

吸収源の強化 森林保全・植林、土壌炭素の増加(農法改善)、CO₂回収・貯留技術(CCS・DAC)、

 

適応策 海面上昇対策(防潮堤・都市移転)、農業の耐暑化・灌漑整備、水資源管理(ダム・地下水保全)、災害対策(早期警報・避難インフラ)。

 

国際協力 パリ協定の強化、炭素税の普及、気候資金の拡大(途上国支援)、技術移転・国際研究協力。

 

 

まとめ

 我々は既に地球を元に戻すことは出来ない状況にある。問題は、我々がどの程度の悪化で留めて、住める地球を次の世代に残せるかです。その責任は我々にある。そして米国の気候温暖化防止に対する背信行為が、人類を危うくしている。米国は温暖化ガス排出が中国の次に多いが、中国はパリ協定を批准している一方、トランプになると2回とも離脱している。

 

 最も恐ろしいのは、このまま悪化させてしまうと、例え排出を停止しても、地球は二度と元に戻らないことです。その悪影響は自然の回復力を遥かに凌いでいるのです。

 

 

 

---全体の目次---

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。