*1
これから、二つの悲惨な結果に至るメカニズムを考えます。
バブル崩壊と戦争勃発はまったく異なるように見える。
しかし実は同じようなメカニズムが働いているのです。
三回に分けて説明します。
* バブル崩壊と戦争勃発について
なぜバブル崩壊が起きるのでしょうか?
誰かが裏でバブル崩壊を煽っているのでしょうか?
残念ながら経済学は崩壊をうまく説明できない。
概ね投資家達(市場参加者)はバブルを好調とみなし歓迎します。
しかし一方で彼らは破産に至るバブル崩壊を恐れます。
一部、間違いなく救済される巨大銀行や崩壊の先頭を切って売り逃げた投資家は別です。(毎回、自分だけは別だと夢想している)
*2
なぜ戦争は起きるのでしょうか?
誰かが裏で戦争を煽っているのでしょうか?
この手の話はいつも巷に溢れています。
しかし多くの真実は戦争が終わってからでしかわからない。
(これを第2次世界大戦とベトナム戦争を例に注釈1で説明します)
平和時であっても、概ね国家は戦争を避けようとして軍備を整えます。
まして緊張が高まると増強へと舵を切ります。
概ね指導者は膨大な人命と破壊が起きてしまう戦争を望まないはずです。
少なくとも国民は戦争が二度と起こらないことを強く望むはずです。
一部、戦争をしても被害の少ない大国や支持率が上がる指導者、莫大な利益を得る軍産共同体は別です。
バブルを煽る投資家達も軍備増強を推し進める国家も共にその悲惨な結果を恐れることでは共通しています。
それでは、なぜ望まない悲惨な結果が生じるのでしょうか?
*3
* バブル崩壊のメカニズム
バブルは経済好調と紙一重ですが、ほぼ確実にバブルは崩壊します。
これは投機家らが株価(金融商品)の高騰が続かないと不安を抱くことが引き金になります。
このタイミングは微妙です。
バブル崩壊の直前まで、多くの経済指標(生産高や失業率)は良好だったのですから。
一つ明確なことは、暴落する時、最初に売り逃げた者は利益を得るが、後になればなるほど投機家達は莫大な負債を背負う運命にあることです。
暴落が始まると、手のひらを返すように貸し手(銀行)が投資資金の回収を急ぎ、逃げ遅れた投機家は莫大な含み資産の所有者から一転して莫大な借金を背負うことになります。
(これを土地投機を例に注釈2で説明します)
この被害は投機資金のレバレッジが効いているほど、中央銀行によるマネーサプライが多いほど起き易くなります(巨額の借金を安易に入手出来る為)。
この時、投資家や金融業が破産するだけでなく、必ず国民も大不況の被害(不景気、失業、福祉カットなど)を長期に被ることになります。
これは銀行の倒産などに端を発する金融危機、つまり巨大な信用収縮が起きるからです。
この深い傷を放置すれば、過去のバブル崩壊(恐慌)後の景気後退のように、設備投資や消費が回復するのに何十年かかるかわかりません。
深刻だったのはヨーロッパの1857年から、米国の1929年から、日本の1991年からの二十年を越える景気後退でした。
このため崩壊後、政府と中央銀行は数十兆円から数百兆円を主に金融市場に投じるのです。
この金額で暴落時の全金融商品(株価など)の評価損を幾分なりとも補うのですが、悲しいことに国民が負担する税金と赤字国債で賄われます。
実はリーマンショック時の全金融商品の評価損はよく分からない。(不明な理由はシャドウバンキングの取引額が分からないためです)
しかし当時のクレジット・デフォルト・スワップ(金融商品の保険)の取引額が6800兆円に上っていたので評価損は見当がつきます(想像を越えますが)。
つまりバブルで儲け、崩壊を引き起こすのは投資家(市場参加者)なのですが、その結果、その痛いツケを強制されるのは傍で浮かれていた国民なのです。
次回は戦争勃発のメカニズムについて説明します。
注釈1
ベトナム戦争は誤解から始まり、深みに嵌った戦争の代表例です。
戦争の発端は第二次世界大戦後に始まる冷戦の敵対感情の高まりにあった。
さらに離れた大陸にあり、異質の文化を持った米国とベトナムは互いに相手国をまったく知らなかった。
初期の接触、ベトナムでの小さな戦闘でこじれたことにより、その後は疑心暗鬼から大戦を凌ぐ爆撃量になるまでエスカレートしていった。
そして米国では大統領が替わるたびに停戦を志向するが、選挙を意識し敗戦の将の不名誉を避けようとして益々深みに嵌っていった。
終わってみると、この戦争で800万人の死者と行方不明者が出ていた。
後に、両国の当時の最高指揮官達が会談して初めて互いの誤解に気づくことになった。
この会談は1997年、ケネディ大統領の下でベトナム侵攻の采配を振るったマクナマラ元国防長官が、ベトナム側に要請して実現したものです。
詳しくは私のブログ「戦争の誤謬 7、8: ベトナム戦争1、2」を参考にしてください。
第2次世界大戦を引き起こしたヒトラーは外部に凶悪な敵がいると扇情し国民を魅了した。
その敵とは主に共産主義者、ユダヤ人、フランスやロシアの周辺国でした。
しかし、やがてドイツ国民は真の破壊者が誰であるかを知ることになるのですが、それは戦争の末期になってからでした。
多くの国民は戦後10年間ほど、ヒトラーに騙された被害者であると感じていたようです。
その後、加害者の自覚が生じ反省と償いが本格化した。
一方、共に戦端を開いた日本では国民が軍部に騙されたと気づいたのは敗戦後でした。
しかもドイツと違って、未だに誰が真の破壊者であったかを認めない人が多い。
極め付きは、国の指導者でさえ相変わらず過去の美化に懸命です。
これでは誰が戦争を始めたかを理解出来ないので、当然、戦争を食い止めることなど出来ない。
おそらくは同じ過ちを繰り返しても気づかないでしょう。
注釈2
身近な企業経営者が1880年代のバブル時にハワイの別荘を買い、バブル崩壊と共に夜逃げしたことがありました。
この過程を説明します。
バブルが始まると最初に工場を担保にし、1億の手持ち資金で国内不動産を購入し、これが数年で2億の評価額になりました。
次いで、これを担保に借金し、別に買った物件がまた4億円に高騰しました。
これを繰り返して行くうちに、遂にはハワイの不動産を買うことが出来た。
絶頂期に彼は総資産20億、借金10億で純資産10億となったことでしょう。
(ここで売れば良かった!!)
しかしバブルが崩壊し、すべての不動産価格が購入時の半値になりました。
彼の総資産は1/4以下に減価し、不動産をすべて売却し返済に充てても借金5億が残りました。
こうして彼は破産しました。
金融商品投資でレバレッジを30倍効かせれば、暴落時の借金はこんな少額では済まない。
ここ半世紀、規制緩和でレバレッジが上がり、金融緩和でマネーサプライが巨大になって投機資金が膨大になり、その尻ぬぐいで累積赤字が天井知らずになっている(減税と公共投資も追い打ち)。
毎回のバブル崩壊で、このように土地、株、商品取引などの高騰と暴落が繰り返されている。
資本主義国だけでなく中国も不動産(マンション)と株で同様の高騰な続いています。