20171112

何か変ですよ! 83: 何が問題か? 6






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今の若者の政治離れと右傾化の一端を探ってみます。
そこには単純で普遍的な理由があったのです。
若者は好んで苦境から目をそらしているわけではない。


はじめに
先進国では軒並み、熱烈な政党支持者が減り、無党派層が増え、少数政党分立の傾向を深めた。
これは日本も同じです。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか?
以前、私のブログでもこの問題を取り上げました。
この原因は、長引く経済と社会の低迷、例えば格差拡大や失業者の増大などに有効な手立てを打つことが出来ない政府にあった。
同時に、国民は長らく政治を牛耳る議員や官僚、また彼ら操っているエスタブリッシュメントに怒りを覚える一方で打破する手立てを持てず、諦めていた。
国民は、自分たちの希望や意思が政治に反映されないことに苛立ち、閉塞感を持っていた。

その一方、日本に限っては、長期低迷の経済にあっても国民はまだ格差拡大を深刻に捉えておらず、また社会は混乱もなく平和でした。
そして国民は概ね社会に満足している。

多くの日本人は閉塞感を抱いていないのだろうか?
私の見る所、政府を信じていると言うよりは日本社会への安心感のようなものがあるようです。
つまり、「何とかなる」と感じているのでしょう。



 

< 2. 非正規雇用比率の推移、ガベージニュースより >

このグラフから若年労働者の非正規が増加傾向にあることがわかります。


 

< 3. 男性の非正規雇用の状況 >
上のグラフはガベージニュースより、下のグラフは非正規雇用フォーラム・福岡より借用しています。

現時点では中高年層の非正規は少ないが、将来、景気の浮き沈みで多少変化するものの、中高年層にも拡大するのは間違いない。
それに応じて大半の労働者の所得は増加することなく横這いとなり、巷には低所得者が蔓延することになる。
こうならないとする根拠も政策もない。

実は女性の方が非正規率が高く、賃金も安く、状況は深刻です。



なぜこのような意識のズレが起きるのでしょうか?
今までも指摘して来ましたが、ここ20~30年の経済データーは明らかに低迷を示しています。

例えば、現実の社会を見てみましょう。
将来、労働者の数割が生涯非正規雇用になり、定期的に首を切られ、年収が0か200万円前後で一生暮らさざるを得ないとしたら将来の見通しが立つでしょうか?
これは若年労働者ほど厳しいが、今の自由放任主義経済のシステムが続くなら将来さらに深刻さを増すことになる。
そしてこのことが経済を更に低迷させることになる。

先ず、生活に不可欠な大きな生涯費用としては住居費5000万円(家賃購入共)、二人の子供の教育費3000万円、一人の医療介護費の自己負担額700万円(総額3100万円)が最低必要になり、合計8700万円でしょうか。
非正規の彼が運よく80年の生涯で、30年間毎年200万円稼げたとして、計6000万円です。
ここから税金(所得税、消費税)と社会保険料(医療・介護・年金)が徴収され、食費・衣料・水道光熱費を出費したら、収入がある時でも可処分所得は年間100万以下で計3000万円以下でしょう。
これで収入の無い時の生活費を賄い、さらに住居費と子供の教育費、医療介護費を支払うことは不可能です。

とてもじゃないが、結婚ができず住居や子供を持てず、医療介護も受けられない。
逆に結婚し、収入を合算して助け合う道もあるが、やはり生活はできないでしょう。
さらに彼らが退職の年齢になっても退職金は無く、年金は雀の涙です。
これでは結婚出来ないホームレスが1千万人を越える時代が来るかもしれない。

ここで不思議に想うのは、最も被害に合うと分かっている若年労働者が今の政治に無関心でこれを放置し、さらに右傾化に惹かれ肯定までしていることです。
さらに、不思議なのはより恩恵を受けている高齢者の方が政治に不満を持っているのです。



次のグラフから上記の理由が見えて来ます


 

< 4. 日本の若者の人口比率 >

このグラフは日本の人口に占める15~24歳の割合の推移を示しています。
この15~24歳の割合は1965年にピークを示しています。

当時の社会はこれに同期するように大きなうねりを経験しました。
1960年代半ばから反戦運動、1968年頃から東大闘争、そして日本の学生運動は1970年まで燃え盛りました。
また1960年代半ばからフォークソングがブームとなりました。
世界的な流れがあってのことですが、日本の若者は呼応したのです。

実は戦後の復興期、1947年からの3年間に806万人と言う大量の子供が生まれ、彼らが20歳になったのが1967~1969年だったのです。
彼らを団塊の世代と言い、彼らの中には「学生は世の中をよくするために身を挺して立ち上がるべきだ」との信念に共感する者が少なからずいたのです。




 

< 5. 日本の経済成長率 >

学生運動が盛り上がった1965~1970年は高度経済成長期(1954~1973年)でした。
けっして、この時代は沈滞した希望の無い時代では無かったのです。
むしろ、彼らは戦後の貧しさから抜け出す為に必死に働き、また苦悩しながら社会を変革しようとした希望多き時代だったのです。
その彼らは現在、退職し70~72歳になっています。

つまり、若年層が多い時代、彼らは政府を批判し、社会を改革しようとしたのです。
そして年をとっても、まだ社会を変えるべきだと思っている人がいるのです。



 
*6


一つだけ指摘するなら
結局、今の若者は平和と安逸に慣れてしまい、社会に対する若者らしい情熱を失ってしまったように見えるが、その大きな要因の一つは、単純に若年層の人口割合が学生運動華やかりし頃の半分にも落ち込んでしまったからと言えそうです。
この相関は人口統計学で指摘されています。

今の若い人に知って頂きたいことは、かつて若い世代(団塊の世代)が社会問題に立ち上がった事実です。
そして、あなた方の将来は団塊の世代の将来と比べものにならないほど劣悪なのです。

もう一つ指摘するなら、あなた方はかつての学生運動の反動で、政府(文科省)の通達により、学校で政治的なことから目を逸らすように教育されてしまつたのです。
これがさらに日本の政治文化を劣化させることになったのです。


次回に続きます。






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