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今回は、深刻な政治の暴走を招く要因を取り上げます。
それは国民に真実が伝わらないこと、つまり報道の自由が奪われることです。
多くの場合、真実が隠されていても国民は気づかない。
しかし一番の問題は、国民が「報道の自由」を気にかけないことです。
* 「報道の自由」の何が問題なのか?
これから数回に分けて以下の問題を明らかにします。
A: 「報道の自由」が無くなると、政府が独善的になり暴走を始め、遂には国家の破綻や破滅を招く。
B: 政府は都合の悪い情報流失を制限し、また国民に知られずに報道の自由を制限することが出来る。
C: 逆に自由が確保されていると国は幸福で豊かになる。
D: 日本に固有の危険要因があり、これが災いをより深刻にする。
E: 一度、報道の自由が低下すると正常に戻すことはほぼ不可能です。
今日はAとBの問題を取り上げます。
< 2. NHK番組改ざん事件と報道ステーション >
* 今、報道の自由が危機に晒されている
現在、アベらがやっている報道の自由を脅かす圧力(批判封じ込め、情報隠蔽)を列挙します。
A: 2001年、安倍官房副長官がNHK放送局長を呼びつけ、制作済み番組を大幅に改変させた。
2005年、朝日新聞がこの「NHK番組改ざん事件」を暴露した。
B: 2013年、アベ内閣が特定秘密保護法を成立させた。
日本の安全保障に関する秘密情報の漏えいに罰則などを定めた。
C: 2015年、古賀茂明が報道ステーションで安倍首相のイスラム国問題への対応を批判すると、菅義偉官房長官の秘書官が「古賀は万死に値する」とメールを送りつけた。
さらに、後に菅は放送法(電波停止)を楯に恫喝を加え、この後、古館と古賀は番組を去ることになった。
D: 2016年、高市早苗総務相は衆院予算委員会で、放送局が政治的な公平性に欠ける放送を繰り返した場合の電波停止の可能性に言及した。
E: 2016年の池上彰の暴露によると、アベが政権に着くと、自民党からニュース報道への毎日のような抗議、そして自民党が作ったネットウヨから番組スポンサーへの抗議電話が殺到するようになった(一次、二次共)。
F: 2017年なら2018年にかけて、政府と官僚らが国会での追及を逃れる為に、証拠書類の隠蔽、破棄、機密扱い(黒塗り)、そして虚偽答弁を繰り返している。
自衛隊、厚労省、財務省など多くの中央官庁が事実を隠し、公文書改ざんまで行っている。
G: 2018年2月、自民党文部科学部会長の赤池議員が文科省を通じて、政府批判を繰り返す前川前事務次官に講演を依頼した学校に圧力(検閲)をかけた。
H: 2018年2月、アベは予算委員会で放送法改革を匂わせ、3月、共同通信が「政治的公平」(放送法第4条第1項第2号)の規制を撤廃するという政府の方針案をスッパ抜いた。
これについて野田聖子総務相 「放送法4条を撤廃した場合、事実に基づかない報道が増加する可能性」があるとして慎重な態度をとった。
これら政府と官僚、自民党の動きを見れば、一貫した意図が見えて来る。
それは政府批判の封じ込めであり、その為に国民には真実が隠され捏造されて来た。
現政権は歴代政権の中でも非常に露骨であり、裏では一層複雑巧妙に行っている。
* 政府批判の封じ込め策は繰り返されて来た
今の凄い封じ込め手口は、これまでの自民党さえ実施したことはなかったはずです。
アベ政権の手口をまとめます。
A: 育成されたネットウヨが批判的な報道機関に嫌がらせを行い、報道自粛に追い込ませた(個人攻撃も)。
実際、放送各局は批判的な報道を抑制し、今回の森友事件での「改ざん」用語さえなかなか使用せず、国会前のデモも放送しなかった。
実は、この手法は、戦前の反権力新聞(朝日、毎日)への抗議や不買運動を煽った在郷軍人会と一緒です。
つまり、軍部(政府)が裏で在郷軍人会を操っていた。
米国のティーパーティー運動(保守派ポピュリスト運動)は今や共和党を支えるまでになったが、これとネットウヨが似ている。
ティーパーティー運動の初期、オバマに反感を持つ実業家や企業が資金を提供し、人々のまとまりのない不安や敵意を煽り、大きな運動へと組織化していった。
B: 放送局への電波停止を匂わせる恫喝は、戦前の新聞紙条例と同じです。
当時の手口は、政府の検閲に従わない場合は新聞紙を供給しないと言う脅迫だった。
これは世間から隠れて行われたので、国民は知らず知らずの内に、検閲されたものだけしか読めなくなっていた。
C: 特定秘密保護法は1925年の治安維持法の再現を思わせる。
治安維持法成立以降、特高や警察によって手当たり次第に政府批判者が捉えられ、多くが国家転覆罪や天皇侮辱罪で獄死し、闇に葬られることになり、社会は急速に沈黙していった。
この結果、政府(軍部)の暴走を止めるものが無くなり、1931年の満州事変で大陸進出の口火が切られることになった。
治安維持法は当初、共産主義革命への恐れから制定されたが、すぐに政府批判を封じ込める手段として猛威を振るうことになった。
D: アベの露骨で執拗なマスコミ支配。
アベ首相による読売絶賛と朝日批難の大合唱、政府や自民党らが裏で行う報道機関への執拗な圧力、政権批判者への執拗な嫌がらせ、「政治的公平」の規制撤廃案などがある。
これらは先進国から見れば常軌を逸した行為とみなされる。
しかし日本の国民はこれらにあまり違和感を感じない。
これこそが第三の未来の壁なのです。
この露骨な支配について米国を例にみましょう。
* 米国のマスコミから見えるもの
ベトナム戦争時、1960年代の米国でホワイトハウスとマスコミは対立していたが、マスコミはこの干渉をはねつけた。
そして米国民はこのマスコミの姿勢に信頼を置いていた。
< 3. クロンカイト >
CBS「イヴニング・ニュース」の有名キャスターのクロンカイトは仕事を終えると、度々大統領から電話(干渉)を受けることがあった。
戦争終結の5年前の1968年、彼はベトナム戦争でアメリカは勝利しないとニュースで宣言した。
ジョンソン大統領は、「クロンカイトを失えば、アメリカの中核を失う」とその影響力を高く評価し、圧力を加えることが出来ず、撤退を考えざるを得なかった。
当時の米国のジャーナリズムは健在だった。
しかし、今は違います。
それは、1980年代に始まった規制緩和の流れの中で、報道にも規制緩和が進んだことによる。
巨大企業によるマスコミの買収、グループ化したマスコミの娯楽優先姿勢、政治的公平の規制撤廃、さらにインターネット普及による新聞(特に地方紙)の衰退などが、米国のマスコミ・報道の自由を蝕んでいる。
その結果、日米の報道の自由度は低下し続けている。
< 4.主要国の報道の自由度ランキング >
ちなみに、報道の自由度ランキングでは、2002年、米国は上位から17位、日本28位でした。
しかし2017年には米国43位、日本72位へと大幅に下げている。
一方で、北欧4カ国はこの15年間、上位4位から10位で安定している。
つまり、政府が報道の自由を守る気がないから低下しているのです。
< 5. 日本の報道の自由度ランキング >
* まとめ
報道の自由が圧迫されると、国民は真の問題が見えなくなり、政府はやがて都合の良い方向に国民をリードする。
多くの場合、政府は政策の失敗をごまかそうとして嘘で塗り固めて行く内に取返しのつかないことになる。
よくあるのは、政府が国民の不満を逸らす為に戦争を始め、また経済不調を他国や移民のせいにして来た。
この結末はいずれも悲惨なものでした。
よく保守論客は、報道の自由度ランキングの算定がいかがわしいので信じるに足らないと言う。
しかし、このランキングを時系列で見、海外と比べ、かつ現実の手口を見ると、概ね評価が間違っていないことがわかる。
次回は別の視点から「報道の自由」を見ます。
次回に続きます。